1杯300円のコーヒーの話
以前、私は新幹線でアルバイトをしたことがある。
そのとき、長野オリンピックと長野新幹線開通だったからだろうか、
アルバイトではあったが、結構な研修が組まれており、
その際に今も心に思い返す研修の一つを受けさせてもらった。
それは、「一杯300円のコーヒーの話」。
研修でコーヒーが2杯用意されていた。
そのコーヒーを別々に違ったかたちで提供され、
どちらが美味しいと思うかを聞かれた。
後で聞いたところでは、その2杯は全くの同じコーヒーであり、
違いがあったのはその出し方だけだった。
一方は笑顔で言葉を添えて、一方は無機質に渡されて。
でもそのコーヒーは間違いなく味が違ったのだ。
ただ一杯300円のコーヒー。
出し方を誤れば『「たかが」一杯のコーヒー』となり、
出し方を生かせば『「されど」一杯のコーヒー』となる。
そこにあるのは、常にお客様を想う優しさや思いやりであり、
それが味を変えるキーエッセンスとなる。
一杯のコーヒーが、こんなにも笑顔や言葉にクオリティーが左右されるのであれば、
料理だって、サービスそもそもだって、お店の評価だって、
その価値「Value」は、お客様を想う気持ちを笑顔や言葉に表現することで、
いくらでも高めることができるのではないかと気づき、
当時19歳の私は、早くお客様に「されど一杯のコーヒー」を提供してみたいと
心躍ったことを今でも鮮明に覚えている。
それはその後の私の「対お客様」の原点となっている。
それは今も何も変わっていない。